9–10 Feb 2023
Asia/Tokyo timezone

中性子星合体の可視赤外線スペクトルで探るr-process元素合成の痕跡

9 Feb 2023, 17:05
25m

Speaker

Nanae Domoto (Tohoku University)

Description

2017年の連星中性子星合体からの重力波 (GW170817) とそれに付随した電磁波放射 (キロノバ) の観測により、中性子星合体でrプロセスが起こっていることが確認された。しかし、これまでに報告されたストロンチウムを除き、GW170817で実際に合成された元素の種類や量はわかっていない。
合成された元素を特定する方法の一つは、スペクトルにおける吸収線の同定である。しかし、rプロセスで合成される重元素の分光的に正確な束縛遷移の (原子) データは十分に整備されておらず、重元素が可視・赤外線にどのような特徴を作るかは理解されてきていなかった。そこで我々は理論計算による原子データを使用し、束縛遷移の強さを系統的に計算して、中性子星合体の放出物質において吸収線を作りうる元素を調べた。次に、吸収線を作る候補となる元素の理論原子データを実験データで較正して新しい束縛遷移リストを構築し、キロノバの輻射輸送シミュレーションを行った。その結果、可視光域ではカルシウムとストロンチウムが強い吸収線を作り、それらが放出物質の物理条件を制限するのに使えることがわかった。さらに赤外線域では、ランタノイド元素であるランタンやセリウムが吸収線を作ることが明らかになった。これらの結果をGW170817の観測スペクトルと比較し、吸収線を使った元素量の制限などについて議論する。

Primary author

Nanae Domoto (Tohoku University)

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